雇用関係が終わるとき③ 解雇理由の規制(判例法理→労契法16条)
昭和40年代の判例にて、正当な理由のない解雇は、民法1条3項 解雇権濫用法理を適用して無効とされてきました。
昭和50年には最高裁が、日本食塩製造事件において解雇権濫用法理を確立しました。
この考えは、平成15年労基法改正により18条2として明文化され、労契法制定に伴い16条ととして規定されました。
第一条
私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
労働組合から除名された労働者に対しユニオン・シヨツプ協定に基づく労
働組合に対する義務の履行として使用者が行う解雇は、ユニオン・シヨツプ協定に
よつて使用者に解雇義務が発生している場合にかぎり、客観的に合理的な理由があ
り社会通念上相当なものとして是認することができるのであり、右除名が無効な場
合には、前記のように使用者に解雇義務が生じないから、かかる場合には、客観的
に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず、他に解雇
の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、解雇権の濫用として無効であるとい
わなければならない。
労働契約法 第十六条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
解雇権濫用法理
解雇には①客観的合理的 かつ ②社会通念上相当 な理由が必要です。
①合理的の3類型
・労働者の労働能力や適格性の低下喪失
重大な能力低下があり、かつ、使用者が具体的に改善強政策を講じたにもかかわらず改善せずその見込みもないことが求められる。
⇒人事考査の結果下位10%は否定、使用者の主観的には不十分だが業務改善プランの課題をほぼ達成は否定
⇒従業員として必要な資質能力の欠如+度重なる指導+改善の見込みかなり低いは有効、上司に対して反抗的な態度+幾度の警告書指示書で改善の機会+改善の意思なし有効
・労働者の義務違反や規律違反行為
労働者の帰責性のみならず、労働者に有利な事情も考慮。
⇒就業開始時刻不遵守等服務規律違反の繰り返し+関係者とトラブル多数は有効、職場の人間関係を既存するような自己中心的で他罰的な言動性向は有効
・経営上の必要性(整理解雇)
労働社側の事由を直接の理由としないため具体的で厳しい制約がある。
●整理解雇の4要素
これらの事情を総合的に考慮して決定する。要件でなく要素!
人員削減の必要性
使用者の経営判断を基本的に尊重する傾向
解雇回避努力
残業削減、新規採用を控える、余剰人員の配転、一時休業、希望退職者募集など。個別具体的に判断される。
人選の合理性
勤務成績、勤続年数、生活上の打撃(扶養)。責任感や協調性という抽象的な基準は認められないことがある。
手続きの妥当性
労働協約や就業規則の解雇規定に則る。規定がない場合でも信義則上の義務がある。必要性や方法時期等の説明義務、誠意を持って協議するなど。
②社会通念上相当
個別の事案ごとに判断しています。今までの判例では容易には認めていません。どちらかというと労働者に有利な諸事情を考慮したり、解雇以外で対処を求めたりしています。