【ハラスメント】事業主にはハラスメント防止措置義務があります。根拠法は?
事業主には各種ハラスメントの防止措置義務があります。
ハラスメント防止法なる法令があるのではなく、労働者の属性やハラスメントの種類により、従来からある法令の一部改正によりそれに関する条項が加えられたり修正されたりしています。
下記の法令及び指針が、直ちに私法上の効力を持つ(労働契約の法源となる)のではないが、これらに沿って十分な防止措置をとっていることは、使用者責任(民法715条)や配慮義務違反の判断において考慮されるとされています。
セクシュアルハラスメントによる不利益を受けること、就業環境が害されないよう事業主が必要な講じる義務。
マタニティハラスメント、パタニティハラスメント、ケアハラスメントについて規定。
保護の対象は性別を問いません。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
第十一条
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
4 厚生労働大臣は、前三項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
5 第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。
◆セクハラ指針(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000212706.pdf
事業主が行うべき措置の具体的内容と方法
①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
■ 育児介護休業法
対象は育児や介護をしている男女。
マタニティハラスメント、パタニティハラスメント、ケアハラスメントについて規定
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第二十五条 事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務)
第二十五条の二 国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「育児休業等関係言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 事業主は、育児休業等関係言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
3 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、育児休業等関係言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
4 労働者は、育児休業等関係言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。
(労働者の配置に関する配慮)
第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
■ 労働者派遣法
対象は、派遣労働者。
マタニティハラスメント、パタニティハラスメント、ケアハラスメントについて規定。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の適用に関する特例)
第四十七条の二 労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第九条第三項、第十一条第一項、第十一条の二第二項、第十一条の三第一項、第十一条の四第二項、第十二条及び第十三条第一項の規定を適用する。この場合において、同法第十一条第一項及び第十一条の三第一項中「雇用管理上」とあるのは、「雇用管理上及び指揮命令上」とする。
(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の適用に関する特例)
第四十七条の三 労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第十条(同法第十六条、第十六条の四及び第十六条の七において準用する場合を含む。)、第十六条の十、第十八条の二、第二十条の二、第二十三条の二、第二十五条及び第二十五条の二第二項の規定を適用する。この場合において、同法第二十五条第一項中「雇用管理上」とあるのは、「雇用管理上及び指揮命令上」とする。
マタニティハラスメント、パタニティハラスメント、ケアハラスメントについて事業主の講ずべき具体的な措置
◆子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851175.pdf
■ 労働施策総合推進法
職場のパワーハラスメントの定義や防止措置。
対象は、労働者全般。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
(雇用管理上の措置等)
第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。
4 厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする。
5 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
6 前二項の規定は、指針の変更について準用する。